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今日も遊家にて…
第二十六話 鶴齡の青木酒造見学
秋のシルバーウイーク初日、余裕をもって出かければいいのに、なんだかんだで微妙な時間に出発。
焦りながらたどりついた東京駅は旅行客で大混雑。10分で新幹線の切符を買わなくてはいけないのに、大ピンチ。
朝飯なんて買う暇なかった。ブルディガーラのサンドイッチ食べたかったから我慢してきたのに!(東京駅内地下で売ってます)
券売機でなんとか買った切符のあとは、改札の長い行列に冷や汗。
ホームに上がったら、人をかき分け自由席ゾーンまでダッシュ。
ひえーっと、空き席についたときには、上越新幹線は走りだしていた。

14時、待ち合わせの青木酒造前に無事到着。
今日は、鶴齢で有名な青木酒造の蔵見学にやってきたのだ。
新幹線湯沢温泉駅から在来線で一駅、塩沢駅が最寄り駅。
駅から徒歩数分というロケーションは、ナイス。
倉庫みたいな外観の蔵だと思っていたら、正面は回りこんだ街道沿いにあった。
オシャレな街道沿いにシックな佇まい。格好いい。
近年、青木酒造が面する三国街道は、道路拡張により歩道が整備され、それに伴い街道沿いの家々は奥に引っ込む形で、新築された。
新築なのに、歴史的風情のある外観で統一されて、にわかにおしゃれスポットとして注目されつつあるエリアとなったのだ。

本日は、遊家の須藤さんの予定に便乗し、現地集合となった次第。
蔵の阿部さんにアテンドしてもらって、隅々まで見学できました。ありがとうございます。

蔵では作りがすでに始まっている。
今年は8月18日から開始したとのこと。
めちゃ早い。こんなに早くなったのは去年からだそうで、蔵元の意向だそうだ。
近年、鶴齢の需要は高まるばかり。無くなりましたじゃ、ダメだよねと一念発起。できる限り作ろうという方針で、8月開始ということになったのだそうだよ。
現在の石高は3000石。立派である。
なんだかんだで、作りは5月まで続き、瓶詰めなどの後工程で6月まで作業は続く。ということは、休みは2ヶ月ですか。
いろいろな蔵が、通年雇用したいけど、無い袖はふれないと悩んでいる中で、青木酒造は前向きに解決してしまっている・・・
売れる限り作ればイイのだ。全国の蔵人よ。

青木酒造では、米も酵母もたくさんの種類を使い分けている。
主に使用している米は、越淡麗。新潟自主開発米ですね。(その他、五百万石、山田錦、雄町、美山錦など。)
酵母は、G9酵母をメインに使用。新潟自主開発の9号系酵母である。(その他、4-5種の主だった協会酵母)
杜氏さん、やってることは農大系ですね。なんでもかんでもやってしまう。
※3年前に代替わりした現在の杜氏さんが農大卒であるのかどうかは聞いていません。筆者の想像です。

洗米機、蒸し器の工程説明のあと、一同は2階へあがる。

麹部屋では、ハクヨー製麹装置が活躍する。蒸し米の温度を計測し、エアコンと連動させる装置。
かつては、寝ずの番であった温度管理を自動化できる。

吟醸用タンクは、密閉された小サイズ。(1トン)小分けに作り、温度など管理を徹底する。
大型タンクは、なりは大きいけど、半分くらい(2.5トン?)で仕込みをする。前後の工程の事情による。

圧搾機。これで絞って酒が出てくる。なんと今日が初搾りの日であった。案内の阿部さんもびっくり。
この酒を飲ませてもらったりして、見学者がブログなどに載せちゃうと、税務署がとんでくるというのは都市伝説ではない。なので、飲ませてもらったりしないのだ。
ところで閑話休題、圧搾機に関しては、こだわるところもあるとは思うのだけど、人為の局地である絞りに絞った最後のいわゆる「攻め」というやつが、筆者の大好物である。
蔵によっては、旨いのでそこだけ出荷するわけには行かないから、混ぜますというところもある。なので雫詰めとか、フーンといった感じ。話が逸れました、戻します。

青木酒造では、現在主に瓶燗火入れを行っている。(パストライザー式)
かつての熱交換器を使用してお酒自体の温度を上げる方法と比較して、大幅に酒質が向上したとのこと。
それを自信を持って販売開始したのだけれど、一部ユーザーよりクレームが。
「こんな、綺麗な酒は鶴齢じゃねぇ」
なんとも、とほほな状況であるが言っていることもわかる。鶴齢の愛飲者はかつて7割が地元消費であったとのこと、近年新潟地酒の雄として全国に流通するようになったとはいえ、馴染みのユーザーの要望であるなら真摯に受け止めなければ。
よって、普通酒にはかつての熱交換式に戻したものもあるそうだ。

瓶燗火入れ装置の注意点として、冬の温度差で装置内で割れることがあるそうだ。そうなってしまうと、異物混入回避のため、徹底的に装置内を掃除する羽目となる。

その他、
普通酒、本醸造酒を製造しているけど、普通種の中身は実は本醸造酒。
一年寝かせてから出荷すると言っていた。(添加アルコールを寝かせる話は聞いたことがあるけど、すごいな。もしかしたら聞き間違いか。)

8月から酒造りを始めるということは、使用米は古米となる。まだ今年の収獲も始まっていないのに古米って言うのも酷な気がするが。
幸い、青木酒造の位置する魚沼の地は日本一の米どころであるため、程度の良い倉庫がたくさんあるそうだ。

今年の初出荷は、おそらく11月下旬とのこと。ちなみに、本日初搾りの酒はそれでは無いだろう。今後絞られる、生酒用のやつがでるのじゃないかな。

三国街道の再開発で、観光バスも来るような街になって嬉しい悲鳴。
http://www.bokushi-st.com/
昔ながらの雁木造りの町並みは風情がある。(だけど、新築)雁木造りというのは、道に面した各家が雪よけの屋根を設置する造りのことだ。(だいぶ簡略化した説明)
でも、ソフト面が足りなくて苦慮しているとのこと。観光客が休めるように蔵が喫茶店も出している。
こういうのに興味があるひとは、Iターンして何か開業しても良いかもしれない。
長野の小布施に似ているような気もするので、栗羊羹とか、カステラなどの名物和菓子に、美術館といった組み合わせはどうだろうか。鈴木牧之という歴史上の文化人もいたようだし、類似するものがある。寺の天井に龍が描いてあれば完璧だな。

その後、青木酒造の売店で、雪男ワンカップを購入した。雪男は、青木酒造のユルキャラとも言える観光商品のようだ。
阿部さんにお礼を言って、一同は解散となった。
私は、一人塩沢の駅から長岡を目指す。なんと、小一時間もかかるし、おまけに一時間に一本しか電車がない。
塩沢駅でも飯にありつけなかった私が、その日の初めての食事をとったのは長岡のホテルチェックイン後、夜19時であった。



青木酒造
〒949-6408 新潟県南魚沼市塩沢1214
025‐782‐0023
http://www.kakurei.co.jp/

阿部さん曰く、青木酒造の酒造りは、淡麗辛口を目指していないとのこと。かつての新潟端麗辛口ブームがあった時、蔵元、杜氏はそれを目指さなかった。
知っての通り、新潟は南北に長い県である。海沿いに長いし、ましてや、青木酒造が位置するのは山間部である。
地域にはその土地々々に食の歴史があり、酒がある。
ブームの際に、それをこぞって追いかけるのも商売ではあるが、青木酒造はそれを良しとはしなかった。
新潟山間部の酒は、濃い、味のある酒であると。
その歴史が、まわりまわって、現代日本酒の一端を担う存在となっている。
伝統を守るだけではなく、新しい酒米、酵母を使い、温度調整を全自動化、そして瓶燗火入れの導入という新規技術にも取り組んでいる。
なんてスマートなんだろう。

2015年09月21日

コメント(2)

これも旅日記風で良いですね(^_^

そう、お酒の好みって難しいですよねー
最近は、”とてもまともな”お酒が増えたので 、単に”うまい、不味い”ではなくなってきたと感じます。
蔵元さんもマーケティングをちゃんとして、蔵の方向性を決めないといけないから、大変だろうなぁ...と。


2015年09月29日 13時14分52秒  tomtom
はい、とてもまともなお酒増えましたねぇー。同感同燗。
一定のレベルにあると、造りの方向性はたしかに蔵元さんが決めたほうがいいですよね。
たしかに、単に旨いまずいでは無いかと思います。
2015年10月01日 23時55分26秒  ごえも〜ん
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執筆者:ごえも〜ん
純米酒好き。
好きな酒は飛露喜。

ブログ:いざかやとかほうろうき